・『ザ・トライブ』(2014)はウクライナ映画。内容は暴力と性の応酬、「聾者に不良はいない」っていうのは完全なる偏見。
・『ザ・トライブ』イントロダクション:「この映画の言語は手話である。字幕も吹き替えも存在しない――」
・主役はグレゴリー・フェセンコ。登場人物の全てがプロの俳優ではない聾唖者を起用。全篇が手話のみによって構成されている。
・関連作:『山の焚火』(1985) 『音のない世界で』(1992)『きらめく拍手の音』(2014) 『ヴァンサンへの手紙』(2015) 『虹色の朝が来るまで』(2018)
映画『ザ・トライブ』あらすじ・動画
映画『ザ・トライブ』あらすじ
~あらすじ~
ろう者の寄宿学校に入学したセルゲイ。
そこでは犯罪や売春などを行う悪の組織=族(トライブ)によるヒエラルキーが形成されており、入学早々彼らの洗礼を受ける。
何回かの犯罪に関わりながら、組織の中で徐々に頭角を現していったセルゲイは、リーダーの愛人で、イタリア行きのために売春でお金を貯めているアナを好きになってしまう。
アナと関係を持つうちにアナを自分だけのものにしたくなったセルゲイは、組織のタブーを破り、押さえきれない激しい感情の波に流されていく…。出典:Amazon
映画『ザ・トライブ』予告動画
映画 『ザ・トライブ』予告編
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映画『ザ・トライブ』監督・キャスト、原作紹介
映画『ザ・トライブ』基本情報
本作(タイトル) | ザ・トライブ/Plemya/The Tribe |
公開年 | 2014年 |
上映時間/再生時間 | 2時間12分 |
監督 | ミロスラヴ・スラボシュピツキー |
キャスト | セルゲイ・・・グレゴリー・フェセンコ アナ・・・ヤナ・ノヴィコァヴァ ロザ・バビィ オレクサンダー・ドジャデヴィチ ヤロスラヴ・ビレツキー イワン・ ティシコ オレクサンダー・オサドッチイ オレクサンダー・ シデリニコフ サシャ・ルサコフ デニス・グルバ ダニア・ブコビイ レニア・ピサネンコ オレクサンダー・パニヴァン キリル・コシク マリナ・パニヴァン タティアナ・ラドチェンコ リュドミラ・ルデンコ |
音楽/主題歌 | ― |
主な受賞歴 | ― |
制作会社/配給元 | ウクライナ状態映画庁、Rinat Akhmetov’s Foundation、Development of Ukraine、Garmata Film Production/彩プロ、ミモザフィルムズ |
映画『ザ・トライブ』原作紹介
脚本:ミロスラヴ・スラボシュピツキー
映画『ザ・トライブ』関連作品①
『ザ・トライブ』の関連作品を取り上げます。『山の焚火』(1985) 『音のない世界で』(1992)『きらめく拍手の音』(2014) 『ヴァンサンへの手紙』(2015) 『虹色の朝が来るまで』(2018)です。
これらは、概ね評価は高い作品が多いのですが、DVDが未発売であったり、動画配信がされていなかったりしているのが、現状です。直近では、邦画『虹色の朝が来るまで』(2018)のように、ろう者のLGBTQをテーマにしたヒューマンドラマが出ています。
これらには、共通点があります。それは「音や言葉というコミュニケーションの手段に障害を持つ人々の生き方や感情を描いている」ということです。では、このテーマに取り組んだ監督や俳優たちの制作秘話やデータなどについて、紹介していきます。
まずはスイス映画史上最高の一作に選ばれた『山の焚火』から。
この映画は、アルプスの山岳地帯で暮らすろうあ者の兄妹が近親相姦に陥ってしまうという衝撃的な物語ですが、実は監督のフレディ・M・ムーラー自身が山岳地帯で育ったことやろうあ者と交流した経験があったことから着想したそうです。
また、主演のトーマス・ノックは本当にろうあ者であり、姉役のヨハンナ・リーアは彼と共演するために手話を習得したそうです。この映画はロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞し、世界的に高い評価を得ました。
次にフランスのドキュメンタリー映画の名匠ニコラ・フィリベールが手がけた『音のない世界で』。
この映画は、パリのろう学校に通う子どもたちや手話教師、ろうあ者同士で結婚するカップルなど、音の聞こえない世界で生きる人々の日常を追ったものです。
フィリベール監督は、ろうあ者の世界を「障害」ではなく「異文化」として捉え、彼らに寄り添って親密かつ繊細に描きました。特に印象的なのは、音声が唐突に途切れるシーンです。
子どもがマイクに掴みかかるのが原因なのですが、それによって観客は彼らの感覚に近づくことができます。この映画はポポリ映画祭やベルフォール映画祭などでグランプリを受賞しました。
続いてノルウェーの新鋭イギル・ボラが監督した『きらめく拍手の音』。
この映画は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ少年アンデルスとその家族の姿を描いたものです。
アンデルスは音楽が大好きで、特にピアノを弾くことに情熱を注ぎます。しかし、彼は周囲の人々とコミュニケーションがうまく取れず、孤立してしまいます。そんな彼を支えるのは、母親や姉、そしてピアノ教師です。この映画は、ASDを持つ人々の感性や才能を称賛するとともに、彼らに対する社会的な偏見や無理解を批判しています。
主演のアンデルス・バウムガルテン・リーヴェは本当にASDを持っており、ピアノ演奏も自身で行っています。この映画はサンダンス映画祭やトロント国際映画祭などで上映されました。
次にフランスの女性監督レティシア・カートンが制作した『ヴァンサンへの手紙』。
この映画は、聴覚障害と精神障害を持つ男性ヴァンサンとその家族や友人たちとの交流を通して、彼の内面や感情を探るものです。カートン監督はヴァンサンと10年以上にわたって親交があり、彼から受け取った手紙やビデオレターを素材として使用しました。
また、ヴァンサン以外の出演者もすべて聴覚障害者であり、手話や字幕で会話しています。この映画はカンヌ国際映画祭でスペシャル・スクリーニングされたほか、セザール賞で最優秀ドキュメンタリー部門にノミネートされました。
以下の作品のDVDパッケージ「画像」をクリックすると、Amazon・楽天で作品詳細等を確認することができます。
『山の焚火』(1985)
出典:Yahoo!映画
監督:フレディ・M・ムーラー
出演: ヨハンナ・リーア、トーマス・ノック
『音のない世界で』(1992)
~解説~
聴覚欠如により、口がきけなくなった人たちの日常生活を写し出すことにより、彼らの現状と実態に迫ったドキュメンタリー。出典:Yahoo!映画
監督:ニコラ・フィリベール
出演:ジャン=クロード・プーラン、アブゥ、アン・トゥアン、フローラン
『きらめく拍手の音』(2014)
映画『きらめく拍手の音』予告編
~あらすじ~
高校を退学して決行した東南アジア旅行の軌跡を記録した作品を制作した後、大学でドキュメンタリーを学んだイギル・ボラ。彼女の両親は耳が不自由だが、夫婦同士はもちろんのこと彼女とその弟と手話を通して表情豊かに会話を交わしている。そんな自分の家族の姿を、イギル・ボラはカメラに収めていく。出典:Yahoo!映画
監督:イギル・ボラ
『きらめく拍手の音』はDVDは未発売ですが、書籍があります。
『ヴァンサンへの手紙』(2015)
映画『ヴァンサンへの手紙』予告編
~あらすじ~
1990年代後半、レティシア・カートンは手話の勉強を始め、ろう者との出会いを求めて“デフクラブ”に行って友人募集の広告を出す。ヴァンサンが彼女の広告に返事をしたことで知り合った彼らは、2003年に一緒に観劇する。その帰りにヴァンサンは、周囲から障害者扱いされて傷ついたことなどについて初めてレティシアに明かす。出典:Yahoo!映画
『ヴァンサンへの手紙』(2015)のDVDは、EAFBIRD DELIVERYで購入することができます。
映画『ザ・トライブ』関連作品②
『虹色の朝が来るまで』(2018)
『虹色の朝が来るまで』本予告
~あらすじ~
ろう者の高橋華(長井恵里)は、群馬の手話サークルで同じ障害のある星野あゆみ(小林遥)と知り合う。同性のあゆみに惹(ひ)かれる自分に困惑するが、やがて彼女と交際することになる。
ある日、実家に帰った華は母にあゆみのことを伝えるが、否定的な態度を取られてしまう。常に味方でいてくれた母の対応にショックを受けた華は、それでもあゆみと別れられないことに苦しむ。
そんな彼女の姿を見たあゆみは、東京で開催されるろう者のLGBTQが集まるイベントに誘う。出典:Yahoo!映画
監督:今井ミカ
出演:長井恵里、小林遥、玉田宙
『虹色の朝が来るまで』は、ろう者のLGBTQ物語を描いた映画です。監督は今井ミカさんで、ろう者であり性的マイノリティでもあるというダブルマイノリティの立場から、自分らしく生きるために映画製作を始めました 。本作は全編手話で撮影されており、手話通訳や字幕なしでも楽しめるように工夫されています。
制作秘話としては、本作は今井監督にとって初めて音響を用いた作品だということです。今井監督は海外のろう映画祭で聴者にも映画を観てもらうために音が必要だと気づきました。そこでカメラマンに湯越慶太さんを迎えて、聴者を意識した演出や場面展開を組み込みました。例えば主人公が涙を流す場面の嗚咽やフラッシュバック場面で聞こえる潰れるペットボトルの音などは、監督が想定していなかった音響効果を生み出しました。
役者秘話としては、主演の長井恵里さんは第一言語が手話であり、両親もろう者であることから、監督と意気投合する側面が多かった点と、実生活において性的マイノリティの友人がたくさんいた点が重要でした。また、劇中に登場するモンスーンドーナツは監督行きつけのお店の一つであり、店主の人柄がロケ地選びの要件だったそうです。
データーとしては、本作は2019年に劇場公開されました。また、第27回レインボー・リール東京(2018年)で公式上映されました 。さらに、早稲田大学演劇博物館で企画展「Inside/Out─映像文化とLGBTQ+」の関連イベントとして上映会が開催されました。
本作は、ろう者であり性的マイノリティでもあるというダブルマイノリティに加えて、群馬と東京を舞台にすることで、都市にみる「ろう者の世界の狭さ」を描きます。また、群馬出身である今井監督だからこそ描くことのできる群馬の美しい情景に溢れています。本作は、ろう者の映画や演劇の文化に対して貢献できる作品だと思います。
映画『ザ・トライブ』口コミ(見どころ・感想)
映画『ザ・トライブ』口コミ(見どころ・感想)
余計な情報がないからこそ、少年少女たちの心の動きや痛み、怒り、閉塞感などが画面から感じられる映画です。
全編手話、字幕なし。見どころはやはり実際の聾唖者が演じているこの作品では、台詞はもちろん音楽も字幕もないところです。手話の字幕がないのにストーリーが分かるのだろうかと不安になるかもしれませんが、観始めるとそんな心配は一切必要なく、ただただ目の前で起こっている彼らの世界から目が離せなくなります。
余計な情報がないからこそ、少年少女たちの心の動きや痛み、怒り、閉塞感などが画面から感じられる映画です。フィクションではありますが、もはやドキュメンタリー映画を観ているような生々しさです。
映画が進むにつれて、ろう者だからこそ起こりうる衝撃的な出来事もありますが、ろう者だから聴者だからといってこの映画が刺さる部分は変わりません。
~感想~
暴力も犯罪もセックスも、言葉や音楽がないだけでこんなにも見え方が乱暴になるのかと衝撃でした。
字幕もないし数ある映画の中でも異色の部類に入る作品なのでしょうが、聾唖者がなんのイメージも背負わずに単純にリアルな不良少年・少女として描かれているのは良かったです。
勝手なイメージや感動のシーンもなく、不良仲間と過ごしたり好きな女の子に夢中になったりする年頃の男の子を淡々と映し出しています。どちらかと言えば胸糞悪い登場人物が多いです。
字幕がない分、観ている側は彼らの視線や表情や仕草から読み取ろうと必死に画面に喰らいつき、まるで「体験」しているような気持ちになります。
衝撃的なラストも聴者には想像がつかないことだから、観終わった後は深く考えさせられました。
映画『ザ・トライブ』評価は?
評価サイト | みんなのシネマ(10点満点) | IMDb (10点満点) | Filmarks (5点満点) | Yahoo!映画 (5点満点) |
点数 | 6.0 | 7.0 | 3.4 | 3.29 |
評価サイトの特徴 | ・映画情報/上映中の映画に! ・評論家コラムや、監督やキャストへのインタビュー記事多い | ・海外オンラインデータベース ・Amazon運営 | ・急成長中! SNSシェア強し ・過去作品、評価も厳しめ!? | ・最初に見る。評価甘めかな!? ・Yahoo!運営 |
※本作品の評価情報は2023年12月20日時点のものです。
映画『ザ・トライブ』まとめ
映画『ザ・トライブ』エンタメのまとめ
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