・『アクト・オブ・キリング』(2012)は、1965年にインドネシアで起きた大量虐殺事件「9月30日事件」を追ったジョシュア・オッペンハイマー監督によるドキュメンタリー映画。インドネシア国内ではタブー視されており、制作に関わった多くは匿名でクレジットされている。
・『アクト・オブ・キリング』では、虐殺に関与した本人たちに当時の行動を再現させるという手法を取り、100万人規模の被害をもたらした事件の真実に切り込んだ。
・『アクト・オブ・キリング』は、笑いを通じ人の心を癒そうとするメッセージ性や、重大な歴史事件を扱いながらも異色のアプローチで人間の心理に迫った点が特徴的。
・『アクト・オブ・キリング』は高い評価を得ており、インドネシア大虐殺の真実を明らかにし、「夫の汚名をそそいでくれた」「真実は必ず勝つ」と、スカルノの第三夫人であったデヴィ・スカルノも高く評価している。
・『アクト・オブ・キリング』の姉妹編に、『ルック・オブ・サイレンス』(2014)も公開された。
・関連作:『SHOAH ショア』(1985)『リーベンクイズ/日本鬼子 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(2001)『記憶の戦争』(2018)
『チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ー』(2020)
映画『アクト・オブ・キリング』あらすじ・動画
映画『アクト・オブ・キリング』あらすじ
~あらすじ~
これが“悪の正体”なのだろうか―――。
60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者は軍ではなく、“プレマン”と呼ばれる民間のやくざ・民兵たちであり、
驚くべきことに、いまも“国民的英雄”として楽しげに暮らしている。映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは人権団体の依頼で虐殺の被害者を
取材していたが、当局から被害者への接触を禁止され、対象を加害者に変更。彼らが嬉々として過去の行為を再現して見せたのをきっかけに、
「では、あなたたち自身で、カメラの前で演じてみませんか」と持ちかけてみた。
まるで映画スター気取りで、身振り手振りで殺人の様子を詳細に演じてみせる男たち。
しかし、その再演は、彼らにある変化をもたらしていく…。
出典:Amazon
映画『アクト・オブ・キリング』予告動画
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映画『アクト・オブ・キリング』監督・キャスト、原作紹介
映画『アクト・オブ・キリング』基本情報
本作(タイトル) | アクト・オブ・キリング(別題:殺人という行為 )/The Act of Killing |
公開年 | 2012年 |
上映時間/再生時間 | 2時間1分 |
監督 | ジョシュア・オッペンハイマー、クリスティーヌ・シン、匿名者 |
キャスト | アンワル・コンゴ・・・1965 年の自己死刑執行人 |
音楽 | エリン・オイエン・ヴィステル |
主な受賞歴 | ・第67回英国アカデミー賞(2013年)長編ドキュメンタリー映画賞 ・第9回オースティン映画批評家協会賞(2013年)ドキュメンタリー映画賞 |
制作会社/配給元 | シーネ・ビュレ・ソーレンセン/トランスフォーマー |
映画『アクト・オブ・キリング』原作紹介
原作:―
脚本:―
映画『アクト・オブ・キリング』関連作品~姉妹編~
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『ルック・オブ・サイレンス』(2014)
~あらすじ~
“殺人”という大罪を犯してもなお、なぜ彼らは罪の意識なく生きられるのか?
常識を覆す、被害者と加害者の“対面”から、100万人規模の大虐殺に隠された、
“責任なき悪”のメカニズムが浮かび上がる──
出典:Amazon
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
映画『アクト・オブ・キリング』関連作品
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『SHOAH ショア』(1985)
監督:クロード・ランズマン
・第11回ロサンゼルス映画批評家協会賞(1985)特別賞
『リーベンクイズ/日本鬼子 日中15年戦争・元皇軍兵士の告白』(2001)
~解説~
リーベンクイズとは、「日本鬼子」の中国語読みで、蛮行を重ねた日本兵たちへ向けた言葉であり、
最大の蔑称である。
“焼きつくし! 殺しつくし! 奪いつくす!
この映画は、十四人の元皇軍兵士が次世代に伝えるほんとうの戦争ドキュメンタリーである。
監督:松井稔
ナレーション:久野綾希子
・2001年トロイア国際映画祭シルバー・ドルフィン賞受賞
・2001年ミュンヘン国際ドキュメンタリー映画祭特別賞受賞
『記憶の戦争』(2018)
~あらすじ・解説~
2018年4月 とある市民法廷がソウルで開かれた。
法廷に立つベトナム人女性のグエン・ティ・タン。
彼女は<フォンニ・フォンニャットの虐殺>の生存者である。
8歳の時に家族を失い孤児となった彼女はその記憶に涙を浮かべる。
あの日、一体何が起こったのか…
あの日の出来事を目撃したディン・コムは身振り手振りで当時を再現する。
あの日の後遺症で視力を失ったグエン・ラップはこれまで語ることのなかった記憶を絞り出すように語る。一方、“参戦勇士”と称された韓国軍人たちは「我々は領民を殺していない」と主張する。
監督のイギル・ボラは女性の製作陣とともに「ベトナム民間人虐殺」の記憶について当事者たちの生々しい証言を記録し、衝撃的で、勇敢で、優しい傑作ドキュメンタリーを誕生させた。出典:株式会社スモモ
監督:イギル・ボラ
『チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ー』(2020)
~あらすじ~
世界はこの大罪を止められるか。ロシア支配下のチェチェン共和国で国家主導の”ゲイ狩り”が横行している。同性愛者たちは国家警察や自身の家族から拷問を受け、殺害され、社会から抹消されている。それでも決死の国外脱出を試みる彼らと、救出に奔走する活動家たちを追った。
出典:Amazon
監督:デヴィッド・フランス
出演:マキシム・ラプノフ、ディヴィッド・イスティーフ、オリガ・バラノバ、ゼリム・バカエフ
映画『アクト・オブ・キリング』口コミ(見どころ・感想)
映画『アクト・オブ・キリング』口コミ(見どころ・感想)
黄色いスーツを着た男は、何度も何度も努力を重ねて嘔吐するような表情をしていた。
私はおそらく、男と同じように、喉の奥で異様に膨らむ巨大な海綿のようなものを感じていた。
それは胸の込み上げる不快感と、意味のわからない涙で目が潤む感覚だった。
花粉症の季節はもう終わったはずなのに、どうしてこんな症状が出るのだろうと思った。
咲き乱れた桜の花びらが風に散ってしまったはずだし、あのばかげた霞のような雲も昨日の風で消えてしまったはずだ。
実際にどうなったかはわからないけれど、散ってしまっていればいいのにと思うだけだ。
そしてその花の木のそばで、お祭り騒ぎとともに歌を歌い、酒を飲み交わす人々がいて、散りゆくように去ってしまうのを願う。
映画が終わった後、テレビ画面の右下には午後1時の表示があった。これは一体何が起きたのだろう。こういうことは偶然なのだろうか。
今、満足感や幸福感、人生で最高の楽しみを経験している文化人たちは、おそらくこの映画の中で初めて私が見つけたアジアの国で起こった大量虐殺の犠牲者や水の中に揺れる残像と似たような死を迎えた人々の詩を詠むだろう。
彼らは満足感や幸福感、人生で最高の楽しみの中で、詩を詠むのだ。すべての概念が宙に浮いている。
愛、正義、悪、詩、死、自由、歌、善、神、平和、音楽、舞踏、酒など、言葉や概念、既成のイメージは全く受け入れられない。
虐殺の記憶を忘れるために踊り、殺戮の光景を追い払うために音楽を聴き、酒を飲んで大麻やエクスタシーで酔いしれ、ときには奇妙な腰つきで楽しいチャチャを踊ってみるのだ。
特に殺しすぎていると感じる夜には、少し気が滅入るけれど、それらをすっかり忘れるために。
ある無名の滝は、水しぶきが散り、霧に包まれながら周囲を白く染める美しい景色を作り出している。
この光景の中で、犠牲者の血や涙で濡れた金色のメダルが、殺人者の首にかけられ、言葉が語られる。
これは、私が時折虚ろな思考で考えることと同じだ。
そして、それを言わせてしまったことに驚いた。
映画製作者には本当に素晴らしい才能がある。
もしかしたら、この話は真実かもしれない。こんな禁断のことを、犠牲者に語らせたなんて。
「私たちを1000回も天国へ導いてくれて、本当にありがとう。」
そう、それは当然のことだ。そうでなければ、私たちが生きるこの世界は、ただの汚れたゴミの山に過ぎないだろう。
そんなことは避けたい。
だから、虐殺とは、単に荒っぽい方法で犠牲者が虐殺者によって天国への扉に蹴り入れられただけのことだと言っているんだ。
だから、殺された人たちは、天国への扉を開いてくれた殺人者の善行に1000回も感謝しているんだ。
あぁ、この地獄から救ってくれた、私たちが勇気を持って開けることのできなかった天国の扉へ、蹴り飛ばしてくれた感謝のメダル。
それを、椅子に座って目隠しをされ、手首を縛られている間に、ニヤニヤ笑う2人の男に差し出され、そして彼らによって一気に引っ張られて絞首刑にされる人が、笑って言うんだ。
または、殺戮者が殺すことが面倒になった場合は、尋問に使用していた机の1本の脚の下に、尋問されている人を仰向けに寝かせ、彼の細い首をその机に当てがい、それから尋問者4人が腰かけて首の骨を折って殺す、まだ誰も試したことのないような方法で殺される人が、笑って感謝の言葉を述べるんだ。
「あなたたちの行いに感謝します、」と。
「私を、この世の悪夢から、あの静かで平和な世界へと導いてくれた、」と。
何という悲しみでしょう。この世界は、とても悲しい場所なのです。
しかし、殺された人々がその後どこに進むのかというと、天国ではなく永遠のリンボーという場所へ落ちていくのです。
だから私は、彼らをそこへ落とした者たちがヘルに堕ちる様子を見届けなければならないのです。
私は、彼らが堕ちるヘルの景色を、自分の血で覆われた眼球から見下ろすことになるでしょう。
そう見下ろさなければならないのです。
かつて殺戮を行った者Aは、可愛い孫を膝に抱きます。
殺戮者Bは、妻と子供と選挙運動をしています。
殺戮者Cは、妻と美しい娘と一緒にショッピングを楽しんでいます。
殺戮者αは、仔犬を連れて配偶者と散歩しています。
晴れた日もあり、時には曇った日もあり、時折、戦火で瓦礫と化した廃墟の中で歌を詠みます。
こんなにも自由を感じたことはありません。
あらゆる種類の自由があふれています。
人を殺す自由、自分の才能で他人の苦しみを詠う自由、愛や正義の解釈に自由な選択ができる自由、虐殺後の夜に飲み物を飲みながら音楽を聴いて踊る自由、机の上で食事をしたり本を読んだり手紙を書いたりする以外の使い方の自由、針金の使い方の自由。
自分たちの歌で殺戮の高揚感を表現し、自由な男たちと自称する自由。
神は反共産主義者であると自由に断言する自由。
殺戮を終えた後にもたらされる真の平和を語る自由。
これほどの自由です。
そして、この自由の世界では「後悔」という言葉はありません。
鬼の設定は何でも可能です。
ここでは共産主義者となっていますが、時には資本主義者になることもあります。
自称自由な人々は、共産主義者という言葉を不潔な害虫のように連呼します。
元共産主義者で、共産主義者を殺す任務に慣れた経験豊富な人物が演技指導を行っています。
彼はサングラスをかけていて、奥深く凹んだ目を持っています。
彼の横顔はシドニーポワチエのようで、ピンクが似合う男性として誇ります。
彼はオバちゃんにわか女優と子供の家が焼かれる場面で阿鼻叫喚の渾身の芝居を披露しました。
周囲の見物人たちは喝采を送りました。
「彼らを殺せ!彼を殺せ!家を焼け!」という声が飛び交いました。
プレマンとは、現地の人々の呼び名です。プレマンは主に映画のチケットを黒く売って収入を得ていました。
そのため、人気のあるハリウッド映画が禁止されると収入源が奪われることになりました。
共産主義者はハリウッド映画の禁止を試みたため、プレマンたちの生計が脅かされることになりました。
それに対する怒りや強面の者たちの鬱憤を利用する方法は、どの時代でも必ず現れるものです。
冷戦時代には、アメリカや西欧諸国がこれを利用しました。
この時、この場では、共産主義者はゴキブリ以下の存在として見なされ、見つかるたびに駆除されるべき存在とされていました。
その結果、100万人以上の共産主義者が1年余りで姿を消しました。
学歴のない無教養な人々は、無知ゆえに他人に対して非常に残酷になる可能性があります。
戦場では、学歴の低い田舎の農民の方が都会の高学歴者よりもより残忍な行為を犯すことができると言われています。
私は以前、そんな言葉を聞いたことがありますが、具体的な記憶はありません。
本も十分に読めない愚かな人々は、結局のところ、人々の行動から遠くに離れているのかもしれません。
面白い言葉を言う人がいるものですね。
アメリカは、将来の援助を条件にして、インドネシア軍が共産党を一掃するべきだと明確な姿勢を示していました。
国務省では、殺されるべき人物のリストが作成されました。そのリストには、共産主義の指導者や組合のリーダー、左翼の知識人が含まれていました。
アメリカの意図は明快でした。
まあね、実際には、この100万人の大量殺戮や残虐行為は、金を贈り物として渡したり、裏から演出したりしたのは、教育の浅い人々の仕業だと言うつもりでしょうか。
でも、そんなことはありえないでしょう。
低学歴者とは、一流大学や大学院を卒業し、博士の称号を持つ人々まで含まれることもあるということですか。
まさかそんなことはないですよ!結局のところ、最も残忍なのは、鳥を絞め殺し羽をむしり取り、料理する者たちではありません。
たとえば晩餐会でタキシードやドレスを着て、小指を立ててシャンパングラスを持つ手を飾った白くて細い指で、フォークに刺さった肉を口に運ぶ人々のことを指します。
ジョージ・ケナンは「戦争は特定の目的を持って始められるものだが、最後には自分自身も予想しなかったような別の理由で戦っていることに気付く」と述べています。
しかし、私は「最初に思っていたこととは違う方向に進んでしまう」ということは、必ずしも当てはまらないのではないかと思います。
民主主義のために戦っているということでしょうか。
しかし、実際には、ある集団にとっては、戦争で勝つか負けるかよりも、民主主義かファシズムかなどよりも、戦争中にどれだけお金を儲けたかが重要であり、戦争が激化すればするほど利益も増えるのです。
私たちだって、隣国の戦争で、過去には非常に甘い汁を吸ったことがあります。
他者の不幸を利用して大儲けしました。全く恥を感じませんでした。
直接的な残虐行為を行うプルマンといった存在の他にも、手を汚さずに高い利益を得ているブローカーのような人々も必ずいます。
学歴が高ければ高いほど、上に行くほどはるかに多くの利益を得ることができるはずです。
パンチラ青年団のリーダーは、小柄ながら、非常に臭いスペルマの匂いを漂わせ、人々の鼻をひん曲げる男性です。
彼は、ゴルフのパートナーとして一緒に行く女性を横目で見ながら、控えめな笑顔で、「おそらくそこにホクロがあるでしょう」といった流し目で言います。
彼は食事中に金髪の若い女の子と写真を撮ることもありますが、彼は彼女の後ろ姿を見て満足げな様子で、「髪を染めない方がいいですよ、そうするとまるで売春婦のように見えますから」と言い、そして、彼はニヤニヤしながら、まだまだ性的に活発な女性の話をしながら、6人分の精液を一滴残らず飲み干すことにも興奮しています。
この小男は、直接手を下さずして、多くのお金を手にしているはずです。
私は、この小男が大金を稼いだペニスを圧力鍋で赤ワイン煮込みにして食べてやりたいです。小男のペニス、赤ワイン煮込みのスペルマソースと一緒にキャンディ玉を添えるのです。
こんな人々に民主主義の一部を担わせることなんて、笑えますよね。
(どこにも自由と独立がある場所には、アメリカの心と神の祝福と祈りが存在しています。ただし、私たちは破壊的な怪物を見つけるために外に出る必要はありません。すべての自由と独立を持つ者に幸せを祈るだけです。)
ジョージ・クインシー・アダムス、1821年7月4日、アメリカ連邦議会 私だけでしょうか、この言葉は非常に悲しいと感じるのです。
わたしたちの9条のような悲しさに満ちています。
この言葉を聞くと涙が出てきます。運命の女神の天秤は、これらのことには傾かないのです。
運命の女神の天秤は、常にお金の方に傾いてしまいます。
これは大きな茶番劇です・・・。
私たちは、この茶番劇の登場人物にしかなれない悲劇です。
天国とは、定員のないとても広い門を持つワンダーランドです。
そして、ゲートを通る資格さえも曖昧です。殺される人とその殺人犯が手を繋いで笑顔で通り抜ける門です。
彼らは永遠に幸せで平和に暮らせる場所です。
それを笑ってしまいましょう。
人間という存在は、共産主義者だけでなく、ゴキブリ以下の生物として表現されてしまうことがあります。
私たちは自分たちが引き起こした恥ずかしい行為をもちろん隠したいと思うものです。
そのために都合のいい物語を作り上げ、それを信じることがあります。
これは精神的な安定を保つための手段ですね。
この世界が地獄だと判断することで、私たちは安心感を得ることができます。
この映画は素晴らしいものでした。
監督のジョシュア・オッペンハイマー氏による来日記者会見を含めて、ほぼすべての映像を視聴しました
オッペンハイマー氏は「人間の腐った心を見ることができる」と静かに語る一方で、この映画が腐った社会に変化をもたらす「触媒の役割を果たす」とも断言しています。
本編自体は非常に長いですし、内容も非常に生々しすぎるため、途中で中断しながらようやく視聴できました。
この作品は、加害者側のドキュメンタリーであり、8年以上かけて撮影されました。
主人公のアンワルは、41人目のインタビュー対象だったのです。
彼が主人公としての立ち位置を得られたのは、『アクト・オブ・キリング』という刺激物に最も敏感に反応したからです。
しかし、アンワルが見せた「改心」という反応も、外部の視点から見ると非常に浅はかであり、自己弁護にまみれているということは確かです。最後の場面は多くの人にとって、理解を超える衝撃を与えることでしょう。
触媒に対する反応を見せない人間も多く登場しますが、彼らの堕落ぶりは信じられないほどです。
アンワルは100万人もの虐殺に関与し、さらに100人以上の人間を拷問死させましたが、彼は安定した生活を送り、洒落た話術で現実の地獄を演じているように思えます。
一方で、彼は悪夢にうなされることもあり、虐殺シーンを再現しながら鼻歌を歌う男でもあります。
これが現実なのです。
しかし、彼が知らずに演じたアクトは、それだけで終わらないかもしれません。
これは手元に置いて時々振り返る映像になりそうです。
1965年には、インドネシアで共産党のメンバーを追い詰め、約100万人の人々が命を落とすという虐殺が行われました。
この虐殺は一般市民である青年団のメンバーやプレマンと呼ばれる人々によって実行されました。
それから50年が経ち、かつてのプレマンたちは自分たちの地位を築き、過去の虐殺を誇りにさえ思っているような状況です。
彼らは取材に応じるだけでなく、当時の出来事を再現した映画を自ら制作し始めました。
この映画は,禁断のドキュメンタリー映画であります。
彼らは自分たちの虐殺行為を正当化し、それを自慢する姿勢さえ見せますが、この映画を見ると、彼らが実は深層では深く傷つき苦しんでいることが分かります。
彼らは否認と心の闇の間で揺れ動き、終始支離滅裂な言動を繰り返すのです。
彼らがしょぼい再現映画の撮影に没頭する様子に織り交ぜつつ、この映画は不気味な笑いを提供しています。
さらに彼らの残虐行為は、社会に暴力と不正義の恐怖をもたらし、彼ら自身だけでなく社会に深刻な傷を残しています。
この映画はドキュメンタリー映画でしか成立しないものです。彼らの表情や困惑、混乱はドキュメンタリー映画でしか捉えることができません。
2時間半を超える長大な映画ですが、どのシーンも重要で見逃すことはできません。
この映画はドキュメンタリーでしか撮ることのできない特別な映画であり、それ自体が非常に異常な企画です。
この映画は、インドネシアで実際に起こった虐殺事件を取り上げ、被害者ではなく加害者である人々を主人公としています。
当時1,000人を殺害したとされるアンワル氏は、今でも英雄視されています。
彼は共産主義者(とされた華僑の人々)をどのように殺したのか、この場所でこうしたことを行ったと得意げに話しています。
そのため、彼が当時の出来事を再現した映画で主演しようと話が進んでいくのです。
映画の撮影が進むうちに、アンワル氏の顔には次第に曇りが見えてきます。
しかし、彼が悪意ある人物ですぎて過去を後悔するといった単純な話ではありません。
彼はお洒落で、孫に優しい「普通の」老人のように見えますが、なぜ彼はためらいもなく人々を殺したのでしょうか。
映画の制作に関するインタビューは、昔の出来事ではなく最近のもので、100年も経っていないということです。
この映画は、当時虐殺が起こった新聞社のオーナーやアンワル氏の仲間、被害者の家族、そして現代のインドネシアの選挙の状況などに焦点を当てています。
この映画では、誰が人を殺し、誰が殺され、そして虐殺によって利益を得たのかという問いに迫っています。
私はこれまで「人を殺すのはいけないことだ」という視点でしか考えたことがありませんでしたが、この映画を通じて利益のために人の命を軽んじ、さらに手を汚さずに平然と生きていくという考え方に衝撃を受けました。
私自身は人を殺すこともされることも望まないのです。
しかし、利益のために暗躍する何者かが殺し合いの状況を作り出してきたことは、過去に何度も繰り返されてきましたし、今後も起こるでしょう。
この映画は、遠い国の話ではなく、今の日本とどのように関係しているのかを知るために、歴史を見直すきっかけになりました。
残酷な場面も多いですし、心地よさを感じる場面はひとつもありませんでしたが、私はこの映画を見てよかったと思います。
心に残る素晴らしい映画でした。
以下は、この映画に対するヴェルナー・ヘルツォークとドゥシャン・マカヴェイエフのコメントです。
ヴェルナー・ヘルツォークは、「私は少なくともこの10年間、これほどパワフルで、超現実的で、恐ろしい映画を観たことがない。映画史上に類を見ない作品である」と述べています。
ドゥシャン・マカヴェイエフは、「絶対的で唯一無二のマスターピースだ」と評価しています。
1965年のインドネシア。
クーデター未遂事件がきっかけで、共産主義者たちが軍部によって虐殺されました。
虐殺の犠牲者数は100万人から200万人とも言われていますが、殺害されたのはクーデターとは無関係の一般市民でした。
このドキュメンタリー映画の監督であるジョシュア・オッペンハイマーは2003年に、この大虐殺の生存者たちへの取材を開始しました。
しかし、インドネシア当局からの妨害と脅迫に遭い、取材を途中で中止せざるを得なかったのです。
その時、生存者たちは「取材をやめずに、加害者たちを取材してほしい」と嘆願したと言われています。
「お願いします。その驚くべき自慢話を撮影してください」とオッペンハイマー氏は提案しました。
彼は「加害者」たちにインタビューを始めました。
やがて、大都市メダンで、殺人部隊のリーダーを務めたギャングのアンワル・コンゴと接触しました。
アンワルは1000人もの人間を殺したと誇り、その殺人方法まで快活に再現し始めました。
彼らは「共産主義者から国を守った英雄」として人々から尊敬されていたのです。
「では、あなたたち自身で、カメラの前でその殺人をもう一度演じてみませんか?」という監督の提案により、前例のないドキュメンタリーが生まれました。
そのドキュメンタリーは『アクト・オブ・キリング(The Act of Killing)』という作品です。
インドネシアは、日本と同じくアジアに属する国です。
日本人にとって最も身近なインドネシアと言えば、人気の高いリゾート地であるバリ島でしょう。
しかし、インドネシアは実際には「近くて遠い国」であり、その暗部はほかのどの国よりもヴェールに包まれています。
アフリカや中東のように、そこで起こっている出来事がほとんどニュースとして報道されることはありません。
しかし、それは決して「何も問題がない平和な国」を意味しているわけではありません。
たとえば、数十年前に起こった東ティモールの独立運動の際、インドネシア政府は独立を支持している様子を装っていましたが、実際には軍部が反独立派の民兵を利用し、独立運動の指導者たちを暗殺していたことはあまり知られていませんでした。
また、ある島では、異なる宗教を持つ隣村の住民が突如夜中に襲撃を行い、次々と村人たちを殺害した、映画『ホテル・ルワンダ』(2004)のような事件が実際に起こったこともあまり知られていませんでした。
さらに、軍事独裁政権の崩壊後も、人権活動家がインドネシア諜報機関によって殺害される事件が報告されましたが、これらの事例が報道され、国際社会から問題視されたという話はほとんど聞かれません。
実際には、インドネシアには未だに解明されていない「闇」が存在しているのです。この作品は、闇の中に光を照射することで、特定の事件や現実の問題を浮き彫りにしているのです。
40年以上前に1,000人以上の人々を殺した犯罪者が、今もなお罪の意識を持たずに幸せに生活しているという事実について語られています。
この話を例えるならば、ホロコーストの40年後でも、ドイツでナチスのメンバーが自分たちの行動を誇らしげに話す様子と同様です。
そして、その現実は今も続いているということです。
アンワルという人物は、虐殺の指導者ですが、見かけだけでは凶悪な人物とは思えません。どこにでもいそうな初老の穏やかなおじさんのようです。
映画評論家の町山智浩氏は、彼を「ニカウさんそっくり」と表現し、彼の片腕であるヘルマンは「マツコ・デラックスそっくり」と言っています。
大量殺人の実行者とは思えない容姿です。
しかし、彼らはカメラの前で、どのように人々を殺したかを喜々として話すのです。
彼らが最初に使った殺し方は、何度も殴って殺す方法でした。
しかし、血がたくさん出て掃除が大変だったため、首を絞めて殺す方法に変えたのだと言います。
アメリカのギャング映画を参考にしたそうです。
彼らは国際法廷に出廷することを求められた場合、出廷はするが罪悪感はないと答えます。
ではなぜ出廷するのかと尋ねられると、「有名になれるからさ」と答えます。
やがて彼らは、自分たちの「英雄的な行為」を出来るだけ多くの人々、特に子供や孫に知ってもらうために、オッペンハイマーの提案を受けて「再現映画」の製作に取り掛かります。
彼らは仲間の家族を動員して、虐殺の再現シーンを撮影します。
しかしそのリアリティがあまりにも強烈で、子供たちは怖くて泣き出し、カットがかかっても泣きやみません。
一部の女性は気を失い、立ち上がることさえできなくなります。
「共産主義だった養父が子供時代に殺された」という男性は、拷問シーン中に本物の恐怖に取り憑かれ、涙と鼻水を流しながら叫びます。
そしてついに、アンワル自身が首を絞められて殺される役を演じるシーンで、何か変化が訪れるのです。
女性までが失神してしまい、それ以上立ち上がることができない状況になるという場面が現れます。
ある男性は、彼の養父である共産主義者が子供の頃に殺されたと語ります。
彼は拷問のシーン中に本当の恐怖に取り憑かれ、涎と鼻水を流しながら泣き叫びます。
そして、最終的には、彼自身が首を絞められて殺される役を演じるシーンで、彼に変化が現れます。
彼の右腕が突然痙攣し始めます。カットが入り、彼は俯いたまま、「同じことを繰り返すことは、もう、無理だ」とつぶやきます。
この時、監督のオッペンハイマーは初めて気付きます。
「彼らには、良心の呵責が全くないのではなく、むしろその逆なのではないか」と。
このドキュメンタリーは前代未聞の手法で撮影されており、どのような結末にたどり着くのか!
私は言葉を失います。
エンドロールで流れるスタッフのクレジットには、大量の「匿名」を意味する「ANONYMOUS」という表記があり・・・。
つまり、インドネシアの現地のスタッフの多くが、「身分を明かすことは命の危険につながる」と判断したためです。
それでも、彼らはこの映画に参加するために身を投じていました。
この作品がアカデミー長編ドキュメンタリー部門にノミネートされたことから、インドネシア政府はついに大虐殺の事実を認めました。
この作品は、2012年の最大の問題作であり、映画を語るうえでで欠かせない存在です。
私は最初、「彼らが再現ドラマを通じてある種の癒やしを得るのだろう・・・」と思っていました。
しかし、それは甘い考えでした。
彼らは明らかに精神的に崩壊していく様子が見受けられました。
彼らについては、これからどうなっていくのか・・・。
続編『ルック・オブ・サイレンス』を見ないわけにはいかない!
60年代にインドネシアで起こった大量虐殺。
この虐殺では、虐殺を実行した人々が英雄視され、その行為を再現ドラマとして演じさせられるという信じられない二重構造が存在していました。
『ルック・オブ・サイレンス』もまたフィクションではなく、ドキュメンタリーだというのが驚きです。
有名な嘔吐のシーンも衝撃的ですが、やはり最も印象的だったのは被害者の家族の表情でした。
過去に家族を失った男性が、虐殺を行った実行犯に対して未だに媚びへつらわなければならない現実に直面している様子は、決してフィクションのドラマでは表現できないものでした。
この映画はオッペンハイマー監督によって制作された(彼はハーバード出身であり、原爆の父と同じ)。
被害者側の撮影は不可能だったため、虐殺を行った側(彼らは自分たちを革命の英雄と信じている)を取材し、カメラの前でその時の行動を再現させる手法が用いられた。
これは本当に驚くべき手法である。
この映画は胸が苦しくなるようなものだ。
視聴する前に気持ちを整えるべきだろう。
これを見ていると、政権に操られ、虐殺を行ったのがこのような人たちだということを実感する。
教育が必要だということも、痛感した。
汚職や賄賂が蔓延しているインドネシアは行きたくないと思ったが、よく考えてみると、実は私はバリ島に2回も行っていたんだ(笑)。ただ、ヌサドゥアに滞在したため治安は良かったです。
あ、デビ夫人はスカルノ大統領の第三夫人ですよ。
映画の中でヴォルテール(フランスの哲学者1694~1778)の言葉が引用されていたのでメモしました。
「殺人は許されないが、鼓笛を鳴らして大勢を殺す場合を除いて、犯した者は罰せられる」という言葉です。
他に、「自由な国における真実な歴史を書くことができる」という言葉や、「悪い政府の下で正しいことをすることは危険だ」という言葉もあります。
『アクト・オブ・キリング(The Act of Killing)』は、2012年にイギリス、デンマーク、ノルウェーで制作されたドキュメンタリー映画です。
この作品は、オランダの植民地だったインドネシアがスカルノ初代大統領の指導の下で独立してから20年後の1965〜1966年に起こった「9月30日事件」と呼ばれる大虐殺を追っています。この事件では、100万人以上が殺害されました。
事件を行った側が政権を握ったため、事件の真実は闇に埋もれ、犯人たちは罰を受けず、むしろ英雄として平穏な日常を送っています。
『アクト・オブ・キリング』の製作には、現地のスタッフも関わっており、事件について話すことは禁忌であり、自身の命にも関わるため、彼らは「ANONYMOUS(匿名)」としてクレジットされています。
この映画では、虐殺、粛清、ジェノサイド、殺害、殺戮といった語が使われています・・・。
ここに、虐殺、粛清、ジェノサイド、殺害、殺戮などについて、数字を挙げておかなければならないでしょう。
毛沢東(中国)が自国民6,000〜7,800万人を、ヨシフ・スターリン(ソ連)が2,000〜2,300万人を、レオポルト2世(ベルギー)がコンゴの人々200〜2,100万人を、アドルフ・ヒトラー(ドイツ)がヨーロッパのユダヤ人1,100〜1,700万人を、ポル・ポト(カンボジア)が自国民170〜300万人を、エンヴェル・パシャ(トルコ)がアルメニア人200〜250万人を殺害したとされています。※
※ただし、これらの数字は参考程度であり、諸説があります。
※※参考までに:バリ島の人口の90%はヒンドゥー教徒、インドネシア全体の人口の90%はイスラム教徒。
この映画は、過去に起きた共産主義者による大虐殺を再現することを試みる、インドネシアのプレマン(ヤクザ)たちのドキュメンタリーです。
彼らは大量殺人の実行犯であり、映画の制作過程で自分の記憶に向き合うようになります。
ただし、彼らの心の動きや内省は描かれず、後悔やトラウマの影響が彼らの身振りや発言に現れます。
途中、映画ではインドネシアの選挙が公約ではなく賄賂の額で決まる様子が描かれるなど、全体的にまとまりのなさを感じることもありましたが、見ていて非常に強い映像を見たと思います。
映画のポスターに描かれているおじいさんは、かつて何千人もの共産主義者を殺したプレマンです。
最初の場面では、彼がかつて殺人を行った場所で、血を出さない殺害道具である針金を持ちながら笑っています。
そして彼は(悪夢や懺悔の前触れが見られましたが)、自分が拷問して殺した共産主義者の役を演じることで、カルマ(※※)を背負う決定的な瞬間を迎えます。
※※カルマ・・・業、行為、宿命などをいう
ラストシーンでは、彼は冒頭で立っていた場所で嘔吐し続けます。
(演技とは、例えば医者の役を演じるために医療現場に立ち会うようなものですが・・・。)
しかし、今回の作品では、かつて虐殺を行った人々がそれを再現することになります。
先述のプレマンは最初は自分の役について、「もっと乱暴に演じる必要があり、髪も黒く染めなければならない」と述べています。
しかし、自分が殺した人々やその家族について考えることによって、彼のカルマが彼を侵食し始めます。
別のプレマンは、大虐殺の場面で観客に残酷過ぎると思われないように演技を軽くするなどの配慮をします。
私は「私を殺して天国に連れて行ってくれたことに1,000回感謝します」という、共産主義者の台詞に気持ちが悪くなりました。
泣きわめいて許しを求める子供たちや一般の人々が泣いている様子が映像からカットされていても、それらの姿は印象に残りました。
映画『アクト・オブ・キリング』評価は?
評価サイト | みんなのシネマ(10点満点) | IMDb (10点満点) | Filmarks (5点満点) | Yahoo!映画 (5点満点) |
点数 | 6.23 | 8.2 | 3.7 | 3.5 |
評価サイトの特徴 | ・映画情報/上映中の映画に! ・評論家コラムや、監督やキャストへのインタビュー記事多い | ・海外オンラインデータベース ・Amazon運営 | ・急成長中! SNSシェア強し ・過去作品、評価も厳しめ!? | ・最初に見る。評価甘めかな!? v・Yahoo!運営 |
※本作品の配信情報は2023年11月8日時点のものです。
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映画『アクト・オブ・キリング』まとめ
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